Knit



今期の製品とは別に、納期を設けずニットを作っています。

オーガニックコットン、コンパクト紡績という毛羽を中に巻き込む紡績方法。
その糸を2本双糸(60番双糸で30番相当)にして、さらに編み機に3本引き揃えにして編立ます。

ニットというと、Tシャツのように生地を編んで・切って・縫う。カット(裁断)してそー(縫う)、これをもじって「ニットソー」などと呼ばれる物ありますが、私が今回作っているのは基本「リンキング」とか「成形物」と呼ばれる物。

初めから、身頃の形に編み上がり、それを「リンキング」という目をひろいながら縫うのです。裏返すと、縫い目にロックがありません。

が、そのリンキングニットにあえて一か所だけ、裁断物と同じロック+縫製を入れています。それが、前Vの部分。

実はこのニット、自分が20年程前に買って着ていた物をモデルに作っています。
某ハイゲージで有名なニットメーカーですが、当時は今ほどゲージもハイゲージではなかった。生地厚もあり、ハイゲージでもとても丈夫でした。

ハイゲージセーターは今では妙なハイゲージ競争の様相に成ってしまっています。確かに、ゲージが高い、目が細かい程技術は要るのでしょうが、理論的に目が細かい程糸も細くないと編めない。糸が細く、とても繊細ではあるけれど強度を考えると疑問が残ります。実際、3万円を超えるようなニットが、本気で着れば1シーズンでダメになる。それってどうなのだ?と思い、目の前の20年前に買ったハイゲージニットを参考に作り始めたのです。

ハイゲージと言っても14ゲージ。単純に軽く、またコストも抑えようと思えば糸を2本引き揃える程度がベーシックな編地なのですが、あえて3本入れています。しっかりした重さ、生地厚が欲しかったからです。

結果出来上がった製品は、まさに自分が20年前に手に入れた製品そのまま。作ってみて、この製品が現代にあまり作られなくなった理由もわかりました。糸量が増えるのでコストがかかるのです。

私にとって、ニットは未知の世界です。やってみなければコストもわからない。だから、ある意味無茶なトライもできたわけです。続報をお楽しみに。