ベルト一本、五か所、200歳


個人的に、コーディネートに欠かせないサーシングルベルト。
ぱっと見た目、簡単そうに見えますが、まずストライプのアクリルベルトは別注したもの。

規格自体は現在もあるのですが、この巾で作られているメーカーは無く、WORKERSで別注しました。当然、うちで作るとなるとメーカーさんが大量に発注するのと違いコストは高くなるのですが。

本当は、この織る工程こそビデオなり写真を撮りたかったのですが、どうしても見せてもらえませんでした。ちなみに場所はWORKERSから1時間ほどの岡山・広島の県境です。

お客様から問い合わせがあった腕時計のベルトはスマートターンアウトをこのネイビーレッドは使っています。

こんな感じに、ベルトと腕時計のバンドを合わせたりといったちょっとした遊びが私は大好きなのです。




こちらはコットンテープにマドラスを児島ではりつけ(元勤め先の専務謹製、近日中に作業工程のビデオアップ予定です)ます。

今年から、マドラスの輸入商社で新たな会社を開拓しました。
もともと「インドマドラス何十年」という商社さんなので、「うちなんか相手にしてもらえるのか?」と心配していたのですが、杞憂でした。

やっぱり、インドマドラス独特の滲んだような色合いは長年やっている商社さんのが一番「それらしい」です。






そして名古屋の金型屋さん。
テープの巾がストライプとマドラスで3ミリほど違うのでまた金型は作り直しです。

この工程も動画を撮ってきたので後ほど。







そして、横浜のレザークラフトマン。
Ad Maiora! のくまさん

個人的に、「クラフトマン」とか「職人」という言葉を安易に使うのは好きではありません。
私自身が、そういう技だけに頼らず規格に沿ったものを作る縫製の現場に居たからです。

もちろん、巻き縫い一筋何十年とかいうおばちゃんはうまいですし、ある意味職人ですが、それを安易に「職人技」とか「職人泣かせ」みたいに売り文句に使うのに抵抗があるのです。
どちらかいうと、いかにそのおばちゃん達にすいすい縫えるような工程、指示書、型紙、企画を作るかが見えない「職人技」だと思うのです。

で、その私をしても、革を扱う作業は見せてもらうと「職人的」としか言いようがありません。

とにかく、作業の一つ一つが、道具を綺麗に、使いやすくカスタムして、精密に指を動かす。
そしてその作業が速い!「早い」じゃなく「速い」です。

綺麗な仕事場、使いやすくカスタマイズされた道具、そして無駄のない身のこなし。
そんなこんなで、WORKERSの革製品はすべてAd Maoira!さんにお願いしているのです。

それとくらべると、ツールバッグなどに使う革部分はあえてパンツ工場で縫ったり、リベットを打っているので荒々しい訳です。これはこれで好きなのですが、サーシングルベルトのような精密に作りたい物はやはりクラフトマンの出番なのです。


で、このたった一本のベルト作るにも、
福山(ベルト本体)
児島(ベルト縫いつけ)
名古屋(金型)
岡山(革型抜き)(これが私がやる工程。量産はタイミングが合えばモデル氏に手伝ってもらい)
横浜(革縫製)

と五か所を経ています。
私含め、皆、そこそこ年は行ってるのでたぶん合計で200歳近く。
合計する意味も無いのですが。
そのぐらいたかがベルトでも、人が一生かけてやる技術が集まって作られているのです。